ブキスケちゅー未遂事件の第四

「ミミ助と同じステージに立つ」──わたしの夢は、まだわたしがステージの下にいた、あの時から変わらない。いつもステージの上で輝いていた、わたしにとっての最初で最後の夢、世界最強のアイドル──渚美海に出会い、たくさんのものをもらって、わたしもアイドルになりたい──そう思ってからたくさんの時間がたち、いろいろな出会いを重ねて。

そんな、人生の濃くて長い時間をすごしても、まだ、わたしの夢は、ミミ助だった。

あの夢はかなえられたけど、かなうだいぶ前から、その夢とは少しちがった想いを抱くようになってもいた。

「ミミ助と同じステージに立つ」──ミミ助と偶然の出会いをはたし、その夢がかない始めたばかり頃までは、こんな想いは影も形もなかったと思う。ミミ助と過ごす時間が長くなり、いつもミミ助がそばにいて、そばにいるのが当たり前のようになって、たくさんのテストをくぐり抜ける中で、わたしじしんとミミ助を比べたり、比べられたりする機会があった。そのたびに、ミミ助の大きさをなんども、なんどでも新しく見つけることができた。あの夢がかなう頃になって、それは、じぶんには大きすぎたんじゃないか──そんなもうひとつの想いが、わたしの胸の中でむくむくと大きく育っていき、いまはもう、見たくなくても目に入るくらいの大きさになっている。

ミミ助と同じステージに立てば立つほど、ミミ助の大きさ──与えてくれる勇気の大きさと、そんな勇気を与えられる存在の大きさが、ありありと伝わってくる。

そして、そんなミミ助を見るたびに、自分の小ささに気付かされて、不安になる。

back
edit